『友達』では転換の音楽を決め、段取りをとり、スムーズに進むように何度も繰り返す。これがプロのスタッフ相手なら1回で済むところだが、研修生たちがスタッフワークも勉強としてやっているので、こちらも演技同様、時間がかかる。まあ、俳優もスタッフもやれと押しつけられる彼らもかわいそうではあるが。
二兎追う者は一兎をも得ず。
避難所まで……近い? 遠い?
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『友達』では転換の音楽を決め、段取りをとり、スムーズに進むように何度も繰り返す。これがプロのスタッフ相手なら1回で済むところだが、研修生たちがスタッフワークも勉強としてやっているので、こちらも演技同様、時間がかかる。まあ、俳優もスタッフもやれと押しつけられる彼らもかわいそうではあるが。
二兎追う者は一兎をも得ず。
今日は午前中から夕方まで新国立劇場演劇研修所の1次試験。受験にやってきた若者たちは誰もが全身に緊張感をいっぱいにみなぎらせ、「ミッション」の遂行に一生懸命。そのがちがちになった声と体はかわいそうなほどだが、いいの、いいの、現実はトム・クルーズのようにはいかないんだから、もっともっと泥臭いんだから、と演出家は若きチャレンジャーたちに温かな眼差しを送りつつ、バッサバッサと非情に合否を決めていく。
現実は厳しくもある。(自戒を込めて)
午後から『友達』の稽古は、今日は初台。今日こそ、たったか急いで最後まで通るつもりが、「聞いてないでしょ?」「だって今、相手の反応、もらってないじゃん」「なんで、そんなふうに勝手にやれるの?それは独り芝居だよ」などと、次から次に演出家は引っかかってしまい、結局半分ちょっとしか進まない。ほとんど手をつけてない場面がまだまだ結構残っているというのに、果たして間に合うのか?今、目の前で起こっていることにちゃんと心動かされること。ただ、それだけだけが芝居だというのに、それができない(確かに難しいが)。ついにしびれを切らしたドS演出家は「今後、相手の反応を受けずにやったらK(演出助手・男子)を殴るから」という理不尽極まりないことを言い出し、実際に隣に座っている演出助手にドスドスとパンチを繰り出し始める。稽古場では『友達』以上に不条理な世界が展開されていく。
その移動中、しゃかしゃか歩道を歩いていたら、コンビニ袋を提げた20歳そこそこと思しき男が突然、「すみません」と声を掛けてくる。思わず足を止めると、「すみません、フジサンはどっちですか?」。フジサンって富士山、なのか……?と思いながら頭が「???」状態になっていると、「すみません、だいたいでいいんです」と食い下がってくる。そこで「あっちだと思います」と指で西の方角を示すと、「ありがとうございました、すいません」と、その20歳男子は風のように目の前から去って行った。……もちろん、既に辺りは真っ暗。あの若い男子は富士山の方角を知っていったい何をする気なのか。狐につままれたような出来事。もしや狐だったのか?
結果。……うーん、まだまだ。これで新鮮さが少しは取り戻せるのではないかと思ったのだが、先は富士山に歩いて行くより遠いのかもしれぬ。
街灯も寒さ対策?
今日の稽古は5時で切り上げねばならなかったのに、なかなか深まっていかない芝居に苛つく演出家がいつのまにか「芝居ってのはね……」「相手を受けるっていうのはだね……」と自分の演技論をぶち上げ始めるので、さほど進展のないまま、あっという間に4時間が過ぎる。
それから歩いて西新宿から初台へ移動し、6時半からはマンスリー・プロジェクトの演劇講座『否定のエネルギーが生み出したもの」を聞く。講師のふじたあさやさん、ゲストの流山児祥さんからはアングラ時代のエピソードがあれこれ飛び出し、取り留めはなかったものの話は面白かった。同時に、「確かにあの頃は演劇が事件になる時代だったんだなあ」と改めて思い、今や社会に与える影響がすっかり小さくなり、お行儀が良くなった現在の演劇状況をちょっぴり寂しく思う。
朝10時半から夜10時まで丸一日、西新宿。会議「演劇と教育委員会」→新国立演劇研修所『友達』の稽古→ワンツーワークス『誰も見たことのない場所』の稽古。一日が追われるように過ぎていく。気がつけば、24時間芝居のことばかりのような毎日が始まって、もう1週間が経過。新年も明けて、はや12日が過ぎている。こんな調子じゃ、やはり今年も追われ追われの1年になりそうだ、マズいマズいとは思うものの妙案はなく、ただ「がんばろー」と実体のない言葉でオノレを駆り立てるのみ。がんばろー、俺。
午後から『友達』の稽古。相変わらず進みがのろい。5時間かけて流れがつくれたのは台本12ページほど。このペースは既に黄色信号。性根を入れて稽古できるのは実質残り8日しかない。ひとまず形にしなければと思うのだが、若き俳優たちは慎重なのか、思い切りが悪い。一人一人がマイプランで周りはお構いなしにセリフを重ねていくので、これでは芝居もどき。芝居ではない。それでいちいち止まって、しつこいほどに同じ個所を繰り返すことになる。
いかんいかん、多少のことは目をつむって先へ先へと進まなければ。我慢我慢と我が身に言い聞かせていた演出家も次第にダメ出しに毒をまぶし始めるが、効き目がまだ雀の涙。明日からは本気になって毒を吐かねばなるまい。(それしか能がないのか、この男)
ずいぶん気になりながら観るチャンスがなかったショーン・ペン監督の映画『イントゥ・ザ・ワイルド』をようやくレンタルで観る。原作がノンフィクションだけあって2時間半の長さも気にならず見応えがあるが、予想外の結末にかなり驚く。でも、だからこそ「幸福とは誰かと分かち合うこと」という言葉が胸に刺さってくる。ショーン・ペンは雄大な自然の見せ方は今ひとつだが、人間の描き方はうまい。
水面を滑る、あれは鴨?と思ってシャッターを切った直後に飛び立った。ちょっと、たまげた。 あちゃー。そうでしたか。さようなら、トム・クルーズ。すっかりスパイ大作戦気分でいたのを無理やりねじ曲げて、西新宿の稽古場へ向かう。