2011年05月20日

右肘に異変。――[428]生誕18,996日

 暑い。5月にして夏日。去年のような連日35℃超えは今年も繰り返されるのか。そうなると電力はいよいよ危ない。節電で体感温度は去年よりも上がり、電力はなんとかパンクせずにすんだとしても、熱射病などで体力のない人間はバタバタと倒れることになるやもしれぬ、この老いた我が身のように。
 
 怒濤の稽古追い込みから昨日なんとか初日を開けて、昨夜は爆睡が許されるはずだったのに、老人の悲しい習性で睡眠4時間で目が覚め、もちろん、その後眠れない。加えて不眠症なのか?
 睡眠は足りてないのに起き出すと、右肘に異変。力を入れて曲げると、ピキピキと痛みが走る。原因不明。突然腕に痛みが走ると脳梗塞の疑いもあるということを思い出し不安におののくが、単に寝違えたのではないかと思われる。
 
 今日は夜公演のみ。みんな疲れを回復し、更に良くなるはずの芝居が、「魔の二日目」で少々ダレる。会話劇なのに会話が突っ走りすぎたり、ノッキングしたりでは、当たり前だがいただけない。ウディ・アレンも泣いている。(と思う)
 終演後は客演女優のNさん、Oさん、Nさんの所属する劇団Hの皆さんと飲みに出る。今夜は生ビール1杯だけにとどめ、12時前には居酒屋を後にする。健全健全。老人生活はこうでなくっちゃ。
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劇場では東日本大震災の義援金も受付中。まだまだ先の見えないニッポン。できることを少しずつ。
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2011年05月19日

初日開く。――[427]生誕18,995日

 初日、無事に開く。何事も川の流れのようにいつかは海にたどり着く。そういうもんです。
 
 午後1時30分。予定通り、2回目のゲネプロ。徐々に俳優陣のテンションが上がってきているのを確信。とはいえ用意周到、完璧主義のA型演出家はそんなことはおくびにも出さず、午後4時からたっぷり1時間、本番直前で既にアイドリング状態に入りつつある俳優に向かって、「ここは失神しながら言って」「そのセリフはウンコを踏むように」と無理難題なダメ出しを矢継ぎ早に浴びせかける。
 
 午後5時、スタンバイ。俳優は楽屋に籠もり、スタッフは最終チェックに余念がない。ダメ出しを終えて用なしとなった演出家だけが暇を持て余し、劇場入り口にチラシを貼ったり、花の位置を変えたりしてお茶を濁す。
 午後6時。受付開始。出足はチョボチョボ。まぁ、はじめはこんなもんさと思っていたが、最後まで客足はチョボチョボ。現実を直視し始めた演出家は次第に口数が少なくなる。
 
 午後7時、開演。さすが、本番に強い役者たち。ゲネプロよりも感情のフットワークが小気味よく。テンポも今までになく快調。あっという間に2時間が過ぎる。
 それにしてもウディ・アレンの素敵な世界が、こんなにスカスカの客席では、なんともったいないことよ。
 
 10時頃から初日打ち上げ。遠方からの常連のお客さんや客演陣のプロダクションの方々も参加して、総勢30人ほどでわいわい飲む。ダイエットに精を出す演出家も、今夜はいっか、とビールをあおり、ミスター・ウエスタンNさん奢りのドンペリをあおり、モツ鍋をがしがし食す。
 12時過ぎにお開き。その後、そのNさんや我が劇団のベテラン俳優のO、女優S、演出助手のOらと2次会に流れ、ひたすらバカ話でわはわは笑い続ける。
 タクシーで帰宅し、帰り着いたのは2時半頃。独りになって初日、無事に開いたなぁとしみじみ噛みしめるが、いやいや、まだまだ開いたばかり。明日以降、まだ13ステージが控えていると気を引き締める。
 『又聞きの思い出』はたぶん、もっともっと面白くなる。
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いらっしゃいませ。上演は29日(日)まで。
残念ながら当日券、まだあります。
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2011年05月18日

瀬戸際。――[426]生誕18,994日

 午前中は小道具の材料調達とキーボードを買いに新宿をうろうろ。あれやこれやの荷物を抱えて劇場入り。

 10分押しの午後1時40分からゲネプロ開始。
 終了後、ダメ出しは後回しにして転換場面のみをテクニカル中心に整理し始めるが、第1幕まで終えたところで打ち切り。夕食休憩を挟んで、夜も予定通り、通し稽古をすることに。
 夜の通しは9時前に終了。そこから時間ぎりぎりまでダメ出しで喋り倒し、10時直前に劇場を出る。

 今日はしっかり2回通したので俳優陣は目に見えてぐったり。体力のないオッサン演出家もぐったり。飲みに出る元気もなく、のそのそと帰路に就く。
 『又聞きの思い出』、いよいよ明日からお披露目。果たして幕はちゃんと開くのか?
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昔の外国の電話機と舞台監督O手作りの交換機。舞台に登場して時代を醸し出してくれる。はず。
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2011年05月17日

半世紀+2。――[425]生誕18,993日

 午後1時から『又聞きの思い出』、場当たり。いつもならテクニカルを中心に進めるのだが、今回は芝居の流れも確認すべく通し稽古を兼ねるように、できるだけ切らずに進める。おかげで時間がかかるかかる。時空が自在に飛び交う戯曲なので照明も時間がかかるかかる。
 

 6時の夕食休憩前にようやく第1幕終了。こりゃ第2幕は締めてかからないと今日中に終わらないぞと、我が身に言い聞かせつつ珈琲をすすっていたら、視界にローソクの点いたケーキが飛び込んできて……。あらら、気がつけばキャストもスタッフも皆さんロビーに集まってるし……。で、誰からともなく「Happay Birthday to You」の合唱が……。ああ、気遣ってバースディ・ケーキなんてもの用意してくれたんだね。
 恥ずかしながらこのオッサン、また一つ歳を取りました。老いの道にまた一歩、深く足を突っ込みました。なのでちっともめでたいことじゃないよなと気恥ずかしさだけが募りながら、ローソクの火嬉々として吹き消す。あー、ケーキに名前まで入れてくれてのね、お恥ずかしい。
 とはいえ、こんな慌ただしいときにすまないね、みんな。ありがとう。天の邪鬼演出家はもう少しガンバルよ。
 早速、ケーキの効果が現れたのか、駆け足ながら退館時間ぎりぎりまでかかって、なんとか第2幕も場当たり終了。よくできました。
 

 劇場を後にして、今日も主要スタッフと飲みに出る。「誕生日だからな、トシの分は俺が出すよ」と舞台監督Oが飲み代を出してくれる。
 「誕生日おめでとう」メールも結構な数が届く。とはいえ、送り主は全員20代。「はいはい、君らはまだまだ未来がたくさんあるからいいけど、こっちはまた一歩、死期に近づいただけの話だからね」と、受信するたびに「老い」を直視させられて、なんとも複雑。でも、ありがとう。死期に近づいたオッサンはもう少しガンバルよ。
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バースディー・ケーキはさっぱり生クリームで超美味。謝謝。 
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2011年05月16日

なんだかうまくいかない。――[424]生誕18,992日

 金曜日に発覚したダブルブッキングはいかんともしがたく、結局、午前中の会議のほうはドタキャン。すまぬすまぬと思いながら、遠い遠い埼玉方面にバスと電車を乗り継いで、S高校へ。早めに着いて来週以降の打ち合わせをする予定だったが、辿り着いてみると、「Y先生は腰を悪くしてお休みです」と、こちらもドタキャン。なんだなんだ、これなら会議に少し顔を出せたじゃないか。――人生、うまくいかない。

 昼からは実技の授業を、みっちり4時半まで。それからまたまた長旅で新宿に向かい、パソコンのインクを購入してから夜7時頃にようやく劇場入り。
 さすがにもう舞台美術は組みあがっていて、おお、素敵な空間じゃないか、と心がはやるが、鬼の演出家はささっと舞台を見て回り、早速、「この階段の組み方はマズい」「ここにスピーカーを置くのはダメ」と舞台監督と音響家に非情なやり直しを言い渡す。(何様?)

 今日は仕込みだけなので客演陣はOFF。稽古もまったくなナシで、劇場を出てからスタッフと飲みに出る。明日以降の打ち合わせになるかと思いきや、バカ話に終始。ただの憂さ晴らしに終わる。いいのか?
 帰宅後、買ってきたインクをプリンタにセットして、よっしゃこれで仕事が進むと思ったら、パソコンが壊れる。いや、本体ではないのだが、キーボードに突如、無反応キーがいくつも出現。「K」とか「N」とか、ウンともスンとも言わないキーが5、6個あって、例えば「かきくけこ」は「あいうえお」にしかならず、「なにぬねの」も「あいうえお」。……仕事にならん。
 ――人生、うまくいかなすぎ。
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木を見上げる。じっと手を見る。(手は見なくていいです)
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2011年05月15日

稽古場撤収。――[423]生誕18,991日

 バキバキに凝っている腰・肩甲骨周り・首筋は、日に日に鉄のように固さを増している。肩甲骨など肩越しに手を回して指で押すと、ごりごりごり、とはっきり音がする。ああ、マッサージに行きたい。そう思って考えてみたら、今年はまだ一度もマッサージに足を運んでいないことに気づいて驚く。
 ああ、すっきりしたい。このごりごりごりがきれいさっぱりなくなることは多分もう死ぬまでないのだろうと思うと切ない。というか、なんとかならんか、この痛み。
 
 部分稽古に時間を割いた後、今日は4時から通し稽古。上演時間は2時間3分。一気に駆け抜けるには、よほど芝居が面白くないと観る側の集中力が切れて飽きられてしまう長さ。退館時間を動かせないので途中休憩を断念したのだが、この一気作戦が吉と出るか凶と出るか。
 それにしても『又聞きの思い出』は時間も空間も、現実も非現実も、実に都合よくあっちこっちに移り変わる。とても舞台でやることを想定して書いたとは思えない。それがウディ・アレンからの挑戦状なのかもしれないが、さすがに手強い。
 明日から劇場入り。初日まで、あと3日。 

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稽古場撤収。お世話になりました。

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2011年05月14日

いよいよ後がない。――[422]生誕18,990日

 午前中から会議で初台へ。今日は間違いなく会議。だが、いつもより30分遅い開始だったので、エレベーター前で鉢合わせした演劇ライターSさんと「時間合ってますよね?」「いつもと違うと、ちょっと不安になりますよね」と、互いの認知症を慰め合う。(認知症はオッサンだけです)
 
 会議後、初台から中野の稽古場へ直行。今日も午後は部分稽古に精を出し、夜は通し稽古。あれもこれも、突っ込みたいところをたくさん残しつつ、あっという間に10時になる。通しはテンポアップに拍車がかかり、さらに2分ほど短縮。「いよいよ後がない」という空気が役者間にも張りつめる。
 稽古場を出た後は舞台監督O、若手スタッフチームと残務の確認と本番に向けての打ち合わせ。これまたあっという間に時間は過ぎて、毎度毎度、芝居の追い込み時期になるとビュンビュンと今日が過ぎて明日がやって来る。
 
 連日の睡眠不足で頭は霞がかかったように、やや朦朧としているものの、減量が功を奏してか体は軽い。こうして心身の一体感がないまま、妙な魔術にかかったように初日へと雪崩れ込むのだろう。稽古場での稽古は明日で打ち止め。
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稽古がスタートして2冊目の台本も開けば書き込みだらけ。
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2011年05月13日

認知症の道。――[421]生誕18,989日

 睡眠4時間弱、二度寝しそうになる体を奮い立たせ、熱いシャワーを浴び用意万端整えて、ふと不安になって電話をしてみる。「今日、会議ですよね?」「違います」
 ……今日と再来週、同じ会議を2回も手帳に書き込んでいた。おまけに、「次に古城さんに来ていただくのは別の会議ですが、16日です」「16日?」「はい。……え、ダメなんですか?」。なんと、ダブルブッキングまで発覚。「えー、古城さんがその日が都合がいいって言ったから16日にしたんですよ」
 なんてことだ。我が身はいよいよ認知症の道を突き進み始めているぞ。はははははは。
 
 『又聞きの思い出』は昼間は部分稽古をみっちりこなし、夜は通し稽古。テンポが出てきて上演時間は4分ほど短縮。うん、これは悲喜劇だね。それがはっきり見えてきた。
 よしよし、この調子この調子。初日まで、あと5日。
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『又聞きの思い出』、一番初めの美術プラン。ここから大きく変貌を遂げております。演劇的にね。
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2011年05月12日

癌手術から丸1年経過。――[420]生誕18,988日

 部屋の鍵忘れ事件は今日も尾を引く。結局、事務所で一夜を過ごし、朝からマンションの管理会社に電話して事情を話したところ、「鍵は大家さんしか持ってないんですよ」「え?そちらでは預かってないんですか?」「はい、ここにはありません」。
 
電話番号を聞いて、予想通り今は小田原にいる大家に電話をすると、信じがたいことに、「鍵は管理会社に預けてあります」「え、管理会社は預かってないと言ってましたよ」「え、そう言ってました?」「はい」「古城さんの部屋の鍵はカード式じゃないですよね」「はい、普通の差し込み式です」「カード式はスペアが作れないので預けられないんですけど、古いタイプの差し込み式なら預けてあります」。
 古いタイプの、という言葉が若干引っかかりつつも再び管理会社に電話。「え、大家さんがそう言ったんですか?」「はい、言いました(なぜ嘘をつく必要がある?)」「……となると、この先は私どもと大家さんが話さないといけないですね」「そうなりますね(ほとんどキレそうになっている)」「それじゃ大家さんに連絡してみて、折り返しこちらから電話します」
 待つこと30分以上。ようやく管理会社から電話があるが、「見あたりません。やっぱり預かってないと思うんですが、社長が出社したら改めて確認してみます。わかったら、またこちらからお電話します」。
 その後、夜中になった今でもまだ連絡はない……。管理会社・大家とすったもんだの電話のやり取りをしている間に10時半近くになり、結局は中野の稽古場まで行って鍵を無事に回収し、それから取って返して一旦我が家へ帰った次第。
 おー。自由に我が家へ入れるってことは、かくも有り難く、嬉しいものなんだね。今や自宅を追い出され、いつになったら帰れるのかもままならない福島の方々の辛さが改めて身に染みる。
 もとはと言えば、我が身のドジから始まったことだが、我が賃貸契約しているマンションの管理体制のいい加減さも発覚。大丈夫なのか、わが住居。にわかに不信感が募ったドジ男はスペアだ、スペアキーを余分に作って今後の万一に備えておくんだ、と勇んで近くの「鍵の110番」に出かけていくと、ドアに「ただ今、出かけています」の貼り紙………。
 
 さてさて、今日で胃癌の除去手術から丸1年が経過。去年の今日は術後の内視鏡検査も無事にクリアして、健康体への道をスタートさせた日。
 そして「3・11」から丸2カ月が経過。こちらは原発の危機が未だに先行き不透明。昨夜、福島県いわき市在住の高校教師・Iさんと電話で喋ったのだが、Iさんは怒りまくっていた。
 「普通にしよう、普通にしようとみんな言い始めてるけど、できるわけないじゃん。間違いなく被曝してるんだよ。被曝し続けてるんだよ。なぜその情報をもっと流さないの?なんでみんなそのことを言わないの?」
 ごもっとも。東電の損害賠償問題にしても、まだ何も解決していないのに、早くも責任逃れを視野に入れた駆け引きばかりが目につく。そこに被災者救済と真剣に向き合う姿勢はまるで見えない。国のメンツ優先、企業の経済活動優先。それで日本が一つになれるはずはない。
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ビミョーにヘタ。
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2011年05月11日

こんな経験するなんて。――[419]生誕18,987日

 稽古場帰りの夜11時頃、ようよう家の前にたどり着いて青ざめる。嘘……嘘だ。嘘だろ。……家の鍵がない。
 途端に頭をフル回転。鮮やかに浮かぶ着替えの瞬間。そうだ、稽古着を入れて置きっぱなしにしているバッグの中だ。十中八九稽古場に忘れてきたと確信。もちろん引き返しても稽古場には誰もいない。鍵も掛かってる。開くのは明日の11時。
 改めて事実を深く認識し、ドアの前で立ち尽くす。手にはコンビニ袋、提げてるし。「こちらは温めますか?」「あ、そのままで」。どうやって食うんだ、ドアの前にはレンジはないぞ。おまけにアイスクリームまで買ってる、このどアホ。
 落ち着け、落ち着け。そうだ、大家が5階に住んでる。顔を合わせたことはないが、非常事態だ、突撃だ。エレベーターで5階に上がり、意を決してインターホンを押す。……静寂。再び、押す。再び……静寂。そうだ。と、よからぬことを思い出す。大家は確か、小田原在住……。このマンションで過ごすのは月末だけと管理会社が言っていた……。
 万事休す。ちょっと前に「我、窮地に陥る」を知らせるメールを送っていたベテラン俳優Oから、「じゃあ、マン喫?」と返信が来て殴り殺したくなる。マン喫、足を踏み入れたこともない。しょうがない、ホテルに行くしかないなと財布の中身を確かめ、敗北感を全身にまとって我がマンションを後にする。
 
 で、今、これを事務所のパソコンで書いてます。そーなんですよ、事務所が近くにあるのをパニック頭は忘れてました。とはいえ、敗北感は拭えない。ここには風呂もないし、テレビもつかないし(あるけど室内アンテナに繋いでない)、何より資料がないので書き物仕事ができません……。
 
 まさか、我が身がこんな経験をするとは。ドジなだけの話ではあるが、精神的ダメージはかなり大。
 思い返せば、1年前の今日は癌手術のため入院した日。「5・11」は自宅に泊まれない宿命なのか?
 などと思いつつ、今からでもホテルに行くべきかどうか、まだ迷ってる。悲しいです。
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ここで一夜を過ごすのも哀れ。
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2011年05月10日

死相が出てる。――[418]生誕18,986日

 本番前最後の稽古OFF。とはいえ、パンフレットの校正、小道具の調達など、やるべきことは目白押し。事務所にも午後に行っては戻り、夜にも行っては戻りと、何でも屋の演出家は雑務にも追われて芝居から解放される時間が全然持てない。ああ、今公開中の『ブラック・スワン』が観たい。
 
 夕方、散髪に行くと、少ない髪を切ってもらってる間に何度も眠りに落ちそうになる。いかんいかんと気を引き締めて鏡を見ると、眼球と頬の窪んだ死相くっきりの顔が目に飛び込んできて、一気に目が覚める。老けましたなぁ俺。死相、出てますもん。かなり古いが、「スリラー」でマイケル・ジャクソンが変身したゾンビに似てる。もしや、もう既に死んでいるのか?
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乗るのがすっかり日課になった。
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2011年05月09日

なんとかなる、はず。――[417]生誕18,985日

 稽古後、舞台監督Oと今回スタッフワークを務める若手の面々と打ち合わせでファミレス、に行くはずが混んでて入れず、居酒屋に流れる。すると舞台監督Oは座敷に座るなり、なんの迷いもなく、「ビール」とのたまう。その上、「面倒臭いから大にして」だと。おいおい、打ち合わせだよ。スキあらば飲みに走ろうとする君が面倒臭いわ。
 
 青天の霹靂の美術の大問題は、なんとか解決の方向に落ち着く。恐らく昨夜、徹夜で図面を書き直したのであろう美術家Iさんから、早朝に変更図面と道具帳がPCに届いていた。基本的には昨夜の緊急対策会議の方針に沿って修正されているが、劇場入りしてみないとはっきりしない点も残されていて多少の不安はあるものの、まぁ、なんとかなるはず。
 演出を変更する必要もなさそうなので、今日は役者に修正階段の説明をした後、第1幕・第2幕と今まで通りの流れで最後まで通る。
 面白い場面、今ひとつな場面、落差が大きい。この差はやはり、どれだけ余裕があるか。どれだけ「聞く力」があるか。結局は基礎技術に勝る者が勝つ。
 さぁ、本邦初演まで残りわずか。面白い芝居になりまっせ。
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1から10が見あたりません。
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2011年05月08日

突如、上演の危機。――[416]生誕18,984日

 夜、今日の仕上げに第2幕の通し稽古の真っ最中。美術家Iさんと一緒に劇場の下見に出かけていた舞台監督Oが慌てて舞い戻ってきて、「緊急事態だ」と耳元で囁く。小声で「どうした?」と聞き返すと、「劇場の奈落が使えない」。「なんで?」「床下には鉄骨の梁が走ってる」。………こりゃ大変だ。事態は飲み込めたが今さら慌ててもしょうがないので、「通し稽古が終わったら行く」と伝える。
 『又聞きの思い出』の美術は、畳1枚分ほどの平台という床を2枚外して、奈落(床下)から階段で上がってくる構造にして既に大道具会社に発注してあったのだが、その平台2枚の間に鉄骨の梁が……。つまり、平台2枚は外せても鉄骨が邪魔して階段として上がってくることは不可能……。
 なんと、ここに来て舞台美術変更? いや、そもそも梁があるのに変更できるのか?発注している大道具だって今さら作り直しは効かないだろう。なんとか無理を言って平台1枚分に納める階段に作りかえたとしても演技はどうなる? スペースが取れないとなるとそれだけ階段は急勾配になって、役者がスムーズに昇り降りするのは至難の業……。
 
 長年、芝居をやっていてもこんなミスが起こることに、やや唖然。稽古が終わって急遽、美術家・舞台監督・演出助手と対策会議。近くのファミレスでオッサンどもが図面を広げて真剣な顔でぶつぶつ意見し合う。もちろんギャグをかます余裕もなし。ひたすら乏しい知恵を絞り合う。しかし、一つ変えれば新たな問題が起こり、それを解決しようとするとまた問題が……。限られた条件で部分的に変更するのは相当に難しい。
 どうなる『又聞きの思い出』。初日まで、あと10日。
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世間は母の日だったようです。
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2011年05月07日

パンフレットに思う。――[415]生誕18,983日

 公演パンフレットの文章を書くのが苦手。「作品がすべてです」という思いがどうしても頭にあるゆえ、開演前に読んでもらうために何かを書くのは、何を書いても何かしらの言い訳をしているようで気が進まぬ。
 我が身は映画館に足を運んでも観る前にパンフレットは買うことはしない。見終わって面白かったら買う。事前に何かしらの情報をインプットしておくのは作品に対して失礼。その思いがあるゆえそうしているのだが、この考え方は変なのか?
 芝居のパンフレットにお客さんは何を求めているのだろう?CAST&STAFF一覧と俳優のプロフィールは必要だと思うが、それ以外は要らないのでは? いやいやこれ、書くことからの現実逃避で言ってるんじゃないですよ。もうン十年も芝居をやってるのに、未だに答えが我が身の中にない。誰か教えてください。
 
 稽古は日々熱が入り、『又聞きの思い出』は確実に進化中。役者が本気になると空気が変わる。笑いあり、感情の爆発あり、いろんな意味で各場面に凄みが出てきた。
 ウディ・アレンの人間を見つめる眼差しはやはり、とても他人とは思えない。稽古を見ながら自己チューの毒吐き演出家はアレンにめちゃくちゃ友情を覚えている。
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初期作品を集めたウディ・アレンのDVD-BOX。おバカ映画が結構あります。でもお薦めは『インテリア』。
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2011年05月06日

体重5kg減。――[414]生誕18,982日

 本日、約1カ月で体重5kg減に到達。人間、痩せようと思えば痩せるもんだ。体重計に乗るたびに数字が少しずつ減っていくのがちょっと快感。ダイエットの喜びも少々実感できたりしてオッサンは日々、乙女のように体重計に乗る。(笑)
 しかしながら5kgといえば相当な肉の量のはずだが、いったいどこの部分が痩せたのやら自分ではさっぱりわからない。 だぶつく腹、満月に近づいていく顔の輪郭。何も変わっていないように見えるのだが、5kgはいったいどこの部分から消失したのか?もしやこれは幻? 見間違いではないのか? などと勝手に不安をあおり、またまた体重計に乗って事実を確かめる。オッサン、減量がよっぽど嬉しいようです。(哀)
 
 しかし体重は落ち始めても体の疲れ具合はさほど変わらない。今日も1時から10時まで、みっちり稽古を終えて家に帰ると、途端に化石のようになっている。
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ごもっともです。
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2011年05月05日

実はドMなのか?――[413]生誕18,981日

 朝起きて午前中はちょろちょろと書き物仕事。昼には稽古場に向かい、夜の10時までほぼ缶詰め。11時頃に帰宅すると肉体も精神もへろへろ。
 でもって疲労回復しないまま翌日には体に鞭打ちながらまた稽古に出かけ、さらに疲れだけを蓄積させていく。
 ……これはどう考えても拷問ではないのか? 拷問の日々になぜ自ら邁進しているのか?ドSを自認してはばからなかったが、もしや我が身はM男なのか?
 
 今回の公演はミスター・ウエスタン俳優Nさんをはじめ、客演が4人と豪華。そのあおりを食って劇団の若手メンバーは地味にコツコツと(悔しさを押し殺し?)スタッフワークにいそしんでいる。
 なので稽古でなかなか上達しない若手のOやSやNにここぞとばかりに罵声を浴びせることもなく、従っていつもより毒も吐かず(むしろ客演の皆様に気を遣い)、
 「溜め込む作業>吐き出す作業」
 という図式で毎日が過ぎている。肉体も精神もへろへろになるのは恐らくここに原因があるのではないか。いやいや、きっとそうだ。やはりここは、相手が客演だろうが毒を吐き、スタッフワークがなってないと若手にも毒を吐き続けなければ。(この男、何かが間違ってます)
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『又聞きの思い出』で重要な意味を持つベッド。歴史は夜つくられるのだね、やはり。
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2011年05月04日

新人Hの歓迎会。――[412]生誕18,980日

 夕方から劇団のミーティング。初日が迫り来る『又聞きの思い出』ではなく、議題の中心は秋の地方公演。スケジュール確定に稽古場確保、役割分担など一つ一つ詰めていると、あっという間に予定時間をオーバー。
 「じゃあ、来年の予定と演目については飲み会で」
 
 というわけでその後、期待の新人Hの歓迎会。とはいえ、始まってみればHのことなどそっちのけでバカ話や芝居の話で盛り上がる。来年の演目の話をし始めると、久々の「劇団飲み」が楽しかったのか、ベテランOはいつのまにか早々にへべれけになり、わーわー喚き散らしながらどんな話にも首を突っ込んでくる。やだやだ、こんなオッサンにはなりたくないと人の振り見て我が振り直す。
 そっちのけだったにもかかわらず、哀れHは終電を逃し、なのに年寄り連中は「お疲れ」とさっさと引き揚げ、結局、いたずらに生命力だけが有り余る若手だけが「朝までカラオケ」へと繰り出していく。元気だ……。
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買うのはやめたようです。
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2011年05月03日

一進一退なり。――[411]生誕18,979日

 GW真っ只中ながら、芝居の稽古だけで時間が過ぎていく。しかも、あっという間に過ぎていく。時間が通り過ぎた後、それなりの成果があったのか、一日を振り返るのが恐ろしい。
 
 昨日、復調して軽かった体が今日はまた急に重くなる。イヤ別に具合は悪くないのだが、ストレッチで体が全然伸びてくれない。日替わりで体が伸びたり、伸びなかったり。その日の体調のバロメーターにはなるが、こうも日替わりで調子が違うとだんだん自分の何を信じればいいのかわからなくなる。一進一退。それが「老い」の身の必然だとわかってはいても。
 
 稽古は今日も第1幕にかかりっきり。それで目覚ましく進展してくれればいいが、こちらも一進一退。というのも、『又聞きの思い出』の登場人物たちは曲者揃い。
 この嘘は見え透いた嘘なのか? 本音が混じっているのか?これは優しさから出た言葉なのか? それとも自己保身を計算した上でのセリフなのか? 解釈の仕方によっては場面の意味が大きく変わってくる。――日々、人間に対する洞察力を磨かせてもらってます。一進一退ではあるが。
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と、アレンは申しております。
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2011年05月02日

みっちり稽古に突入。――[410]生誕18,978日

 体、ようやく復調。原因不明の気持ちの悪いだるさから、ようやく抜け出す。ウォーミングアップをする体も軽く、よく伸びる。おお、帰ってきましたね、我が体。お帰りなさい。
 ――しかし、あのだるさはいったい何だったのだろう。去年の癌発覚のように、何かトンデモナイことが我が身の体内で進行しているのではないかと気が気ではない。
 
 『又聞きの思い出』はいよいよ追い込み稽古に入り、今日から長時間稽古に突入。しかし、予想以上に稽古場が狭かったため、役者もスタッフも居場所を確保するのもひと苦労。何かと大変ではあるが、それでも本番さながらの置き道具が並ぶ、実寸での稽古は楽しく、心躍る。
 劇場入りまで2週間。やる気満々で行きまっせ。
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稽古場の舞台監督の机。作りかけの小道具、ガムテープはペン立て代わり。A型の我が身には許せない雑然さ。
あ、この舞台監督もA型でした。
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2011年05月01日

気持ち悪いだるさ。――[409]生誕18,977日

 目覚めれば頭がどんより。でも風邪ではない。そう我が身に言い聞かせるものの、妙なだるさが体から取れない。筋肉の疲労というより内臓が言うことを聞いてくれない。そんなイメージなのだが、ホントに妙な嫌な感じのだるさなので、たまりかねて昼前から少し横になる。だが気持ち悪さはそれでも消え失せてくれず、結局、稽古はウォーミングアップをパスしてしまう。
 もしや、これはまた我が身に癌細胞が体内に出現したのではないか? ――と妄想だけはたくましくなるが、思い返せば急性胃腸炎の延長で胃カメラ検査をしたのが去年の3月4日、癌発症を通告されたのが3月19日(この「老い日記」のスタート日)、そして癌の切除手術が5月12日。いつのまにか約1年が経過しているわけで、この間に新たなる癌が発生していたとしても何の不思議でもないのかもしれぬ。
 などと鬱々たる気分でいたのだが、芝居の稽古を進めるうちに徐々に元気を取り戻す。体の内側に溜まっていた毒を「ダメ出し」という毒に変えて遠慮なく吐き出したのがよかったのかもしれぬ。やはり役者に煙たがられようと、人でなしと罵られようと、稽古で毒は吐かねばならぬのだ、我が身のためにも。と、演出家は固く心に誓う。
 などと自己チューに考えてしまうのも、目下稽古中の『又聞きの思い出』に出てくる人物が皆、恐ろしく自分勝手で愚かな大人ばかりなので(だからこそ、この上なく魅力的なのだが)、どうやら我が身もこの人物たちに感化されているのだから自己チューも仕方ないと、何かを間違って理解している演出家は自分勝手な我が身を今日も独り慰めている。
震災チャリティー.jpg
街角で大震災チャリティーの演奏パフォーマンスに出くわす。吹き荒れる善意の嵐は自己チューではないよね?
posted by 老い日記 at 00:00 | Comment(0) | 日記